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ライフサイクル、人それぞれ

そらクリニック外苑前のブログNo.47です。
今日は女性のライフサイクル(人間の一生をいくつかの過程に分けたもの)のお話です。
乳幼児期、学童期、思春期青年期、性成熟期、更年期、老年期、それぞれに起こり得るライフイベント、発症する疾患が異なります。身体の成長、成熟、老化によるものは男女とも同様ですが、女性ホルモンの変化によるものは女性特有の症状や疾患を引き起こします。最近では、脳の働きの特徴も男女の違いがあるということがわかってきました。
また、女性という立場、社会的役割が要因となるストレスもあり、同じ人間であっても男性と女性は疾患の成り立ち、発症リスク、経過もそれぞれ違ってきます。

では、ライフサイクル毎の特徴を見てみましょう。

乳幼児期:遊びや好きなものの特徴から男女差が生じます。この時期は親から愛情を受けて生育し、人間関係に必要な基本的信頼感を獲得することが大事な課題です。幼児期には自律性、自主性を育て、その反面で自己抑制、思いやりを持てるような社会性の基礎が築かれる時期だと思います。

学童期:学校という集団生活の中で勉強という課題をこなす中で生じる達成感と劣等感の調節を経験していきます。友人との信頼関係や他者への思いやりを得ることでコミュニケーションの基礎を身に付けます。学童期も終盤には第二次性徴が訪れ思春期に入って行きます。

思春期青年期:女性であれば初潮をむかえ、大人の入口にさしかかります。身体の変化が受入れられず摂食障害になったり、ホルモンのアンバランスにより精神的に不安定になったりすることもあります。統合失調症もこの時期に発症することがあります。
精神発達の側面では、この時期に他者と自分との違いを自覚し、自分らしさを模索するいわゆる葛藤の経験をすることになります。クラブ活動や様々な習い事などで自分の好きなことを追求していくこと行動が見られるのもこの時期です。高校卒業の時には将来の職業選択にも結びつく選択をすることになります。女性の場合、多くは女性としての人生と一人の社会的存在としての職業選択という狭間に立たされることになります。「女性らしくする」ということと「職業を持って自立する」という本来別の問題であるはずのことが、同じ土俵で語られることを経験し戸惑うこともあるのではないでしょうか。

性成熟期(青年後期〜成年期):20代から40代前半くらいまでの時期です。社会人になり仕事を持つ。結婚して家庭を持ち、子供を育てる、などが一般的なコースです。
精神面では、幸福・安定に繋がる愛情の対象の獲得や社会的役割の確立などが課題です。青年後期成年前期と成年後期では異なっている印象があります。40歳位を境にして、愛情や結婚の対象選択が大きな課題になるか否かが分かれるように感じます。特に女性の場合、生殖という課題の点でも40歳が節目です。愛情の対象を獲得してもその維持に加え、子供を持つ、家庭生活をこなす、仕事をする、など様々なライフイベントがあり、大人になるまでも大変ですが、大人になっても大変なことばかり、というのが実感するところです。
身体面では、妊娠・出産におけるトラブル、月経に関連した子宮や卵巣のトラブル、PMSなどホルモンバランスのトラブル、乳房の疾患、甲状腺の疾患など、女性によく起こるトラブルに注意が必要な時期でもあります。

更年期:日本人の女性の閉経は約50歳です。更年期というのは閉経の前後5年間を指します。これは一般論ですので個人差が大きいです。
家庭内では、子供の成長に伴い役割が複雑化していたり、家族の介護などのストレスを抱えることも生じてくる時期です。仕事も責任のたる立場になったり、若い世代とのギャップを感じたりすることも多いのはないかと思います。時代の移り変わりで仕事自体が変わってきて、一昔前と違い50代でも新たに勉強し発展させて行かないとこれまでの余力のみでは通用しない世の中になっていると感じます。
子育ても一区切りした頃に、役割の終了の寂しさから空の巣症候群のようなうつ状態になったり、更年期障害でうつ状態に陥ることも見られます。
身体面は女性ホルモンの低下により、動脈硬化のリスク、高血圧のリスクが高まり、代謝が落ちることで糖尿病の発症のリスクも高まります。骨量の低下も徐々に進んでいきます。

老年期:いくつから老年期と呼びべきか正直迷います。現代は60歳代を老年とは呼び難く、後期壮年期とでも言いましょうか。向老期、後期円熟期なんて呼んでいる先生もいらっしゃいます。
身体が健康で経済的にもゆとりがあれば、リタイア後の一定期間がとても充実したものになるでしょう。しかし、この時期は定年、子供の独立、パートナーの死など大事なものを失う体験をする時期でもあります。職業的肩書きのない自分、母・妻という肩書きのない自分と向かい合うことにもなります。母として、妻として生きることを美徳として生きている女性は多いです。その役割から離れるということに解放感がある反面、喪失感も大きいのです。うつ病や様々な神経症を発症するきっかけになります。
独身の女性の場合、一人の生活に強い不安を感じ、過度に病気になることを恐れて却って精神的にバランスを崩す方もいらっしゃいます。
この時期、身体面でもアルツハイマー病や骨粗しょう症などのリスクが高くなります。うつ状態で発症し認知症が目立たなくても徐々に物忘れなどの症状がはっきりしてくることもあります。

ざっと書いていきましたが、あくまでも一般論です。最近は年代で分けられないこころの状態の変化が生じています。30代でも思春期的問題を抱えていたり、老年期に子供の自立の心配をしていたりするケースも少なくないです。男性と女性の役割の違いでしょうか、家庭内では子育ての責任を背負い込みすぎている方も多い印象です。
現代社会では女性も働くことがあたりまえになってきました。でも現実は、まだまだ男社会です。女性が男性と同じように社会で認められるということは大変稀です。我々医者の世界でもそうです。でも私は男女同じである必要はないと思っています。違うのだから女性は女性としての特徴を活かして生きて行けばよいと思います。さらに女性としてという概念も面倒であれば、人それぞれがその人らしく生きられれば良いと。女の一生をまとめるはずでしたが、もっと気楽に生きましょうというメッセージで閉めることにしました。