さて、この科目はどう違うのでしょうか。
心療内科という科目は実は日本にしか存在しません。元々は心身医学という、疾患を身体の病気だけでなく心理的、社会的な側面から診る考え方から発達しています。ドイツで生まれアメリカで発展したのですが、その中心は精神科医でした。
日本では、疾患の発生に心理的要因が大きく関わる身体的な病気を扱うものとして内科の分野から発達してきました。自律神経失調症という概念もこの内科の先生たちが名付けた病名で、世界的な統一見解に基づいた病名ではないのです。
いわゆる自律神経失調症は症候群で、国際的理解で言えば神経症やうつ病などの精神疾患に付随する各種身体症状ということになります。
ちなみに外国には心療内科医はおりません。
では、何故、日本では心療内科のお医者さんがたくさんいるのでしょうか。
実は、心療内科を標榜している医師の殆どが精神科医です。要するに諸外国と事情は同じなのです。標榜科に「心療内科・精神科」とある場合は精神科医が一般精神疾患と心身症も診ると理解して良いと思います。一昔前の精神科の開業医は「内科・心療内科」と標榜する方も多かったです。これは、精神科を受診する抵抗を少なくするためでした。最近は標榜科に精神科をあげる抵抗が少なくなった印象があります。
ところで、本物?の心療内科医は存在するのでしょうか。
日本のいくつかの大学には心療内科があります。そこで経験を積んだ医師は専門医制度もありますし心療内科医であると言えると思います。
心療内科では主に心身症を診ているはず・・・でしたが、私が大学を卒業して最初に入った心療内科の医局では、心身症中心というより神経症や軽度のうつ病の患者様が多かったのです。精神病を診ない精神科という印象を受けました。(この感想に関しては異論も多いかと思います。)
心療内科という科目は、こころと身体を両方診るという素晴らしいコンセプトを持った科ですが、一歩間違うとイメージ先行、中身があれれ?な医師もいる可能性があります。心療内科や精神科での臨床経験がないのに標榜している医師もいる印象なので、おかかりになる前に最低限経歴や資格のチェックはした方が良いと思います。
因みに精神科医の専門性を見る資格は、学会認定の制度ではなく、精神保健指定医という精神保健福祉法という法律に基づく資格が一つの指標になります。この資格を持っていないと精神科の病棟で働くに当たって半人前なのです。諸事情あり精神科の学会認定の専門医制度の歴史は非常に浅いものです。上の世代の医師はこの専門医を持っていなくても十分な知識と経験を持っている精神科医が大勢いらっしゃると思いますが、最近は学会認定専門医も取るのが主流だと思います。
心療内科・精神科の医療機関を受診される時の参考にして下さい。