そらクリニック外苑前のブログ *こころの空もよう*南青山の予約制の心療内科 女性のためのメンタルクリニック 女医 女性専門

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悩む脳

私が大学病院の心療内科で医師のキャリアをスタートさせた時に感じた事があります。「治らない〜!薬って効かない〜!」でした。不眠とかパニックとかピンポイントには効くのですが、何となく色々な所が調子の悪くなるいわゆる不定愁訴の方や軽うつの方には薬が効いているのか効いているのかわからない。でも飲んでいる方が眠れるし多少良いという事で通院されてるんです。単純に考えて悩みがあるからうつになるとか、不安になる元があるからパニックになると考えがちですけれど、メンタルの疾患は悩みや元が無くても症状が出ます。だから病気という事になるのですけれど、だったら薬が効いてくれるとありがたいのですが、そうは行かないのです。

自分の身体の状態のとらえ方、何か問題が生じた時の行動のあり方、感情のあり方に偏りがあるために症状が出ているのです。いわゆる認知の問題なんですね。認知だったら考え方変えればいいのでは?となって認知行動療法なんてのが今は知られるようになってきてます。でもこれもそう簡単には行かないと思います。考え方というのは、個々人の脳の思考回路の癖みたいな物なんですけど脳の機能が関係していると思います。性格という表現もされると思いますが、ようするに患者様達は悩む脳の持ち主なんだなぁということを臨床の場に出てから気付きました。

心療内科は、元々心身症を診る科ですが、実際は受診される方達は神経症や軽度うつ病の患者様がほとんどです。当時研修医だった私は先輩から引き継いだ慢性化した神経症の患者様達の治療にあたって先ほどのような感想を持ったのです。

医師になって2年目、都立病院の精神科で研修が始まり精神病レベルの統合失調症躁鬱病の治療を経験しました。この時には「薬で治る!」という感想を持ちました。正確に言うと治ると言っても目立った症状が軽くなるだけで元の状態に戻るわけではないのですが、治療するかしないかが劇的に違うのは確かです。この精神病レベルの患者様の中には自ら病気であるという自覚がなく家族に連れられ受診される事も多く、明らかに脳の機能の異常による疾患なのですがこの場合な(自ら)悩む脳ではなく、(周囲を)悩ませる脳の状態となります。悩ませる事を悩む事がない脳、、皮肉で悲しい事だと思います。

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